小さな私を背負って登山をしてくれていた父。吹雪の雪山に行った時、寒くて半泣きだった私達兄弟に、カップラーメンにチーズとお餅をぶち込んだものを食べさせてくれた。とっても暖かかった、、栄誉面から考えても理にかなったものだったんだと登山ガイドになった今はよくわかる。
私の登山の原点はやはり父だ。
だけど74歳になった父は、あそこが痛い、どこどこがシンドイ、などなど、、、弱ってしまって山どころか下界でもほとんど歩けなくなっていた。
大阪と信州、離れて住んでる分会うたびに目に見えて弱っている、あんなにアウトドア派だった父が動く事から逃げているように見えた。
登山の仕事に就いてしみじみ考える。父には本当に感謝だなぁって。父ともう一度山に登りたいなぁと思うが、もう無理だろうなぁとほぼ諦めていた。
先日のGW、私が仕事でほぼ出っぱなしで家に帰ってこれないので両親が大阪から子供達と過ごすために来てくれた。
GW終盤、私も両親と過ごすことができた。両親が帰宅する日、私が仕事以外の日にトレーニングに行っている里山に行ってみないか誘ってみた。
ちょうど『二輪草、カタクリ、シロバナエンレイソウ、ヒトリシズカ』など雪解けのほんの僅かな時期にしか見れない花が沢山咲いていたので山頂まで行かなくても花のあるところまで行ければいいね。って提案してね。
あんまり乗り気ではなかったと思うし、父自身も無理だと半分以上決めつけてのスタートだったと感じる。スタート時、下を向いてゆっくりゆっくり、暗い雰囲気でとにかく無言で歩いていた。
しばらくして二輪草が現れた、少し明るい表情になった父が携帯で写真を撮っていた。気持ちが動き出した、そう感じた。次々とあまり目にできない花が現れた、登山道から外れた急坂にまで足を伸ばして写真を撮ってた。
もう、笑顔だ!!
会話も弾み出した、笑いも溢れる。一緒に来てくれた子供達もムードメーカーになっていたからかもしれない。
登山開始から一時間半が過ぎ、どんどん疲労が増していくはずなのに、ハアハアとはなるものの、どんどん元気になって冗談まで言っている父。
やっぱり山は笑顔とパワーをくれた。
そして倍の時間をかけてゆっくりゆっくり、家族揃って登頂できた。
小さな里山なんだよ、でもね
父の笑顔は清々しかった!!
気持ち良さそうだった!!
達成感が現れていた!!
嬉しくて写真を撮るような山ではないけど、近くにいた人にお願いして家族揃って記念撮影をした。
私はめいいっぱいの笑顔で心の中では嬉しくて号泣した。
大阪に帰って母から電話があった
「山に登れて嬉しかったみたいやで、お花も見れて喜んでた、何か自信がついたんぢゃないかなぁ。ありがとうな。」
って。嬉しかった。
何に関しても人は自信がつくと日々がガラッと変わってくる、笑顔も増える、もっともっと何か力になりたい。
夏に北アルプスで一時半ほど歩いて絶景小屋に行かない?って提案した。
少し悩んでるみたい、でも父がそれを目標にしてくれたら今年の夏の私の目標もそこだ!!全力でサポートさせてもらいたい。
小さな里山の一度の登頂で人は目に見えて前向きになって、笑顔が溢れた。
山に、自然に、父に、感謝。